建築士のホームインスペクション(住宅診断)の調査内容と費用と資格

建築士のホームインスペクション(住宅診断)

2000年代になって、日本でもホームインスペクション(住宅診断)を主な事業として行う会社が出てきて、2010年以降は急速に普及してきました。今では、住宅の売買や新築を扱う不動産会社および建築会社で、ホームインスペクションのことを全く知らないという会社や業界人はほとんどいないでしょう。

それほどに普及し、利用されているインスペクションではありますが、まだ基本的なことを把握されていない方は、ここで基本をおさえておいてください。

ホームインスペクション(住宅診断)の調査内容

ホームインスペクションで行う調査の内容について紹介します。その名のとおり、基本的には住宅を対象とした建物の調査ですが、一戸建て・マンション・アパートのいずれもが対象となりえるものです(インスペクション業者によっては、種別による対応可否の相違がある)。

建物の外部・外構

建物の外部は、基礎・外壁・屋根が対象となるものの、屋根はその形状等の条件によって全く確認できない場合や一部の確認となることが多いです。高層の建物では、外壁も高い位置は詳細な確認は困難です。

外壁周りなどに取り付けられているもの(雨樋など)は、調査対象とする業者と対象としない業者があるので、依頼前に注意しましょう。

外構にあたる塀・フェンス・門扉などの構築物についても、調査対象とする業者とそうでない業者があるので、こちらも依頼前に確認しておきたいものです。外構は、建物本体ではないからと軽視しがちですが外構にも重要な症状がみられることもあるからです。

建物の内部(床下・屋根裏を含む)

建物の内部は、床・壁・天井・水周り設備・建具・サッシ等が調査対象となります。床と壁は傾斜測定を行い、設備で動作可能なものは動作確認を行います。

床と壁の傾斜測定は1箇所のみとする業者と複数個所で測定する業者がありますが、建物全体の傾向を把握するためにも、複数箇所(各フロア・各居室)での計測がより望ましいです。

床下および屋根裏では、基礎・床組み(土台など)・小屋組み(梁など)・断熱・配管・シロアリ・雨漏りなど様々な重要項目を確認できるため、調査したいスペースです。しかし、点検口がなかったり、検査員(ホームインスペクター)が進入できるだけのスペースがなかったり、障害物があったりと様々な理由により、十分な調査をできない住宅もあります。なかには、全く確認できない住宅もあります。

全く確認できない住宅を購入するかどうかは慎重に考えたいところです。

ホームインスペクションの費用

ホームインスペクションには、専門家の人件費(調査・移動・報告書作成等の時間の全てに関するもの)、交通費、会社の管理費などがかかりますので、決して安くはない費用がかかります。

建物面積が100平米程度の一戸建て住宅で、45,000~80,000円程度が多いですが、床下や屋根裏の調査も含めると、90,000~140,000円程度が多いです。マンションは、40,000~60,000円程度が多いです(特別なオプション調査をする場合は別途)。

安すぎる料金設定は、その会社や担当者の実績・経験・ノウハウなどの心配もあるので、金額だけで選ぶことの内容に充分に注意したいところです。

なお、一般的なホームインスペクションと雨漏りや構造的な不具合の原因調査は根本的に異なる調査であるため、費用体系も違ってきます。ここで言う一般的なホームインスペクションとは、住宅の購入に際して利用されるようなものをイメージしており、一次診断と言われることもあります。そういう意味では、雨漏りや構造的な不具合の原因調査は二次診断の位置づけとなります。

ホームインスペクションに必要な資格と建築士

住宅購入に際して、または自宅の点検に際して、ホームインスペクションを検討している人から、「どういう人が診断に来るのか?」「どのような資格を持っている人がくるのか?」と聞かれることは多いです。

資格だけで建物の診断を的確にできるわけではないものの、依頼者の立場としては心配になるのは当然ですし、最低限の資格がないと不安に感じるものおかしなことではありません。

ホームインスペクションに深く関連がある資格の代表格は以下の2つです。

  • 一級建築士・二級建築士・木造建築士
  • 既存住宅状況調査技術者

新築住宅のインスペクションだけをするならば、既存住宅状況調査技術者はなくても問題はありませんが、中古住宅の診断をするためには、2つとも必須です。そもそも既存住宅状況調査技術者は、建築士の資格がないとその講習を修了して資格を得ることができません。

ホームインスペクションに関連する資格は他にもたくさんありますが、そういったものはいずれも民間資格であり、その有効性は不透明です。インターネットで検索すれば、様々な資格(ホームインスペクター(住宅診断士)、住宅メンテナンス診断士、建物検査士、建物アドバイザー、ハウスインスペクターなど)が出てきます。

建築士会(建築士の業界団体)が運用している建築士会インスペクターもあります。

いずれにしても、建築士と既存住宅状況調査技術者の資格が最重要です。これらについては、確認してから依頼するようにしましょう。

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